社長ブログ

心の洗濯、でもないけど

心の洗濯、でもないけど

行こう行こうと思っていてなかなか実現できずにいましたが、ようやくということで、行ってきました!川村美術館。

 

結論、素晴らしい!

 

もっと早く行けばよかったと思うほどで、久しぶりに右脳がウルウルの1日でした。話しが前後するようですが、ご存知の通りここはDIC株式会社が収集、運営をする、正式名称もDIC川村美術館と称する企業が母体の民間美術館です。

https://kawamura-museum.dic.co.jp/

自身は絵画の鑑賞方法も、作品の見方も知っているわけではないのですが、そんな向きでもまずはこの環境に感銘を受けるはず。いい意味で周囲とは一線を画すように計画的に整備された(であろう)庭園、里山、ビオトープなどを含んだ敷地に一旦入ると、人の営みやインフラといった日常的な風景や建造物が目に入ってくることはありません。伊勢神宮にしても足立美術館にしても、一旦敷地内に足を踏み入れると、そこから日常を想起させるものが目に入らないようデザインされているけど、思想は同様だと感じさせます。

本丸の美術館の建築も素晴らしく、外観デザインや外壁の色や素材は、敷地全体のランドスケープデザインを損なわないものであるのは言うまでもなく、館内の随所に取られた大窓からのぞく庭は、まさに借景。もとい、最初から借景にすべく大窓を設けたであろうし、庭の側にしてもやはり最初から借景にするべく造成された意図がひしひしと伝わり、何と言うのか建築家の息遣いや眼差しといった温もりさえ感じるほどです。

そして、敷地内の里山がまたスゴい。行ったその日は最高気温が35度を超える猛暑日でしたが、散策がてら里山に入った途端、体感でマイナス5度くらいかな、吹き抜ける風とともにグっと涼しくなり、汗も引くほど。まあこれは里山の効能の1つで、この里山のチカラではあるのだけど、この里山はその周辺に点在するビオトープを含め、美術館に入館しなければ「市民の公園」として無料で入ることができ、誰もが身近に自然を感じられるようになっていることがスゴいことで、これを一民間企業がやっているということに頭の下がる思いです。

 

肝心の美術館も少しだけ。常設展での誰もが知る「あの絵」、「あの作家」が点在しているのですが、何と言ってもロスコ・ルームでしょう、ここのハイライトは。

我が愛読作家である高村薫先生の「太陽を曳く馬」の装丁にも使われたマーク・ロスコの本物は、圧倒的迫力をもって迫ってきます。深いこと、難しいこと考えず、ただロスコ・ルームに入ればいいのです。誰もが本物だけが放つ神々しいオーラに魅せられること、請け合います。何十年も前にMOMAで初めて見たロスコ以来の感動で、しばし時間を忘れて部屋の居心地の良さと相俟ってロスコ・ルームに佇んでしまいました。もちろん、これ以外にも常設展、企画展ともに盛りだくさんなので、純粋に美術館として入場しても満足度は十分高く、お腹いっぱいになるはずです。

 

語るべきことはこれ以外にも多々あるでしょうし、コレクションを深掘りすればキリがありませんが、感心するのは、というよりも考えさせられたのは、この施設の在り様ということでしょうか。

設立したその時に意図していたかは不明ですが、名称こそ美術館と称しているものの、ここは企業の一市民としての在り様というのか、社会の公器としての企業や市民としての企業(法人)が「調和」と「責任」という文脈で見事に表現された施設だと思うのです。美術館のwebサイトでは“作品、建築、自然の三要素が調和された”と書かれていますが、それ以上の大きな枠組みとしての、環境との調和、社会との調和、未来との調和を感じることができ、SDG’sやCSRといった言葉さえなかった設立時にすでに、多様な価値観を社会と共に調和させた企業の在り様を実現し、それを継続することが企業の責任であると体現しているようです。

不遜かつ月並みな言い方ですが、賞賛に値する企業活動だと感じました。と同時に、果たしてどれくらい稼げばこんなことできるんだろう?とレベルの低い勘繰りも頭をよぎるなど、いろんなことを考えさせられた暑い暑い夏の午後でした。

 

敷地内の飲食店が原則予約制なのと、周辺に食べる所が無いのが玉に瑕ですが、場所も成田空港の少し手前と、週末のショートトリップにちょうど良い距離感で、おススメです。

社内報に関するご相談、問い合わせはこちらから