社内報コラム

ゼロから知るフェムテック。女性への健康支援が今後の経営に不可欠な訳とは?

ゼロから知るフェムテック。女性への健康支援が今後の経営に不可欠な訳とは?

従業員の健康づくりを通じて企業価値を高める「健康経営」を掲げる企業が増えるなか、近年世界的な注目を集め始めているキーワードが「フェムテック」です。
そこで今回は、女性のさらなる戦力化に欠かせないアイテムとなるフェムテックについて、基本的な知識や背景、事例などをご紹介します。

拡大の一途をたどるフェムテック市場

フェムテック(FemTech)とは、女性(Female)と技術(Technology)からなる造語で、女性特有の健康課題(月経・妊娠・出産・更年期など)に対し、技術で解決を図る商品やサービスのことを指します。

もともとは2012年に、生理周期アプリを開発したデンマーク出身の女性起業家が、「女性の身体の悩みを解決する」というニーズを投資家に理解してもらうため、使い始めた言葉です。

フェムテックがカバーする領域は広く、主なカテゴリーとしては「妊娠/不妊」「月経」「更年期」「産後ケア」「婦人科系疾患」「セクシャルウェルネス」などがあげられます。

開発・提供されているサービスも、月経管理アプリなどの簡易なものから、卵子凍結や胎児の監視など不妊症治療、遠隔診療、女性特有のがん検査に至るまで多彩な領域にわたっています。

人口の半分を占める女性特有の悩みを解決するという点で世界的に注目を集めており、フェムテックの市場規模を世界レベルで見ると、2019年時点の約8億ドル(約880億円)から、2025年には500億ドル(約5兆5,000億円)まで膨らむと予測されています。

フェムテックが重要視されてきた背景

フェムテックが世界で重要視され始めてきた背景としては、次のような要因が考えられます。

1. 女性が声を上げやすい社会へと向かう世界的潮流

女性の社会進出、SNSの浸透、ジェンダー平等意識の世界的な高まりなどを背景に、「#Me Too」運動をはじめ、今まで他人と共有しづらかった女性特有の悩みや問題が可視化され、声を上げやすくなったことがあげられます。

2. テクノロジーの急速な進化

センサーなどの技術が急速に進化したことで、生理や更年期など女性が抱えてきた悩みがデータ化されるようになりました。
その結果女性の心身の不調についての研究が進み、解決策が提示されやすくなってきたことが、フェムテックの進展に拍車をかけています。

3. 女性の可処分所得の増加

働く女性の増加により、女性の可処分所得が増加したことも追い風となっています。
一般的に女性は男性より消費性向が高い傾向にあるため、女性が自由に使える所得が増えるにつれ、フェムテック関連の製品・サービスが利用される機会もますます増えていくものと期待されています。

4. 女性起業家・投資家の増加

女性の起業家およびそれをサポートする女性投資家が増えたことで、女性視点による女性のための画期的な製品・サービスが登場しやすくなったことも、市場拡大を後押しする要因としてあげられるでしょう。

女性の心身の不調が及ぼす企業経営への影響

2017年時点では世界で50社程度だったフェムテック関連企業は、2020年には500社近くにまで増加しました。日本国内でも2020年3月からの半年間で、51だったサービス数が97に急成長し、今も増え続けています(2020年12月 fermata調べ)。

その一方で、2021年3月にSOMPOひまわり生命が1,000人の女性を対象に行った調査によると、フェムテックの認知率はわずか1.9%と低く、女性たちの中でさえまだ十分に浸透していないのが現状です。

しかし女性の社会進出が進んでいるなか、働く女性の心身のトラブルはすでに多くの影響を企業経営に及ぼしています。

月経を例にあげると、生理痛・月経前症候群など月経随伴症状に伴う体調不良が引き起こす労働損失と、医薬品・通院にかかる費用など1年間の経済的負担は約7,000億円にのぼるとされています(経済産業省)。

そしてキャリア形成においても、例えば仕事と不妊治療が両立できないことを理由に退職した女性の割合は23%、不妊治療をやめた女性は10%で、合わせて33%に達しています(厚生労働省)。

また、更年期を理由に昇進を辞退した経験のある女性は50%、辞退を考えたことのある女性は17.3%で、合わせて7割近くに上るとのデータもあります。女性特有の心身の変化と不調は、キャリアアップにおいても障壁となっているのです。

これまで月経や妊娠(不妊)、更年期などは、個人レベルで対処すべき問題と認識されていました。しかし今後、女性の力を本気で活かすためには、企業や社会全体で女性のヘルスケアをサポートする仕組みが不可欠となっています。

【参考】
fermata「国内 Femtech(フェムテック)マーケットマップ 2020年秋冬版」https://note.com/hellofermata/n/n67de6061b478

SOMPOひまわり生命保険株式会社「日本の Femtech(フェムテック)市場の可能性に関する調査」https://www.himawari-life.co.jp/-/media/himawari/files/company/news/2020/a-01-2021-03-02.pdf
経済産業省「健康経営における女性の健康の取り組み」2019年3月 
https://www.meti.go.jp/policy/mono_info_service/healthcare/downloadfiles/josei-kenkou.pdf
厚生労働省「不妊治療と仕事の両立に係る諸問題についての総合的調査」2018年3月 https://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/0000197936.html
ホルモンケア推進プロジェクト「女性の体調と仕事に関する調査」2014年12月 http://hormonecare-pj.net/archives/info/press/38-2

日本で注目を集めているフェムテックの事例

こうした世界的な流れの中、国内でもいくつかの大手企業がフェムテック市場に参入を始めています。

1. ファーストリテイリング(GU)

「ユニクロ」で有名なファーストリテイリングは、女性の健康サポートを目的とした「GU BODY LAB(ジーユー ボディーラボ)」プロジェクトを始動。第1弾として2021年3月、吸水機能付きのショーツなど9商品の販売をスタートしました。

また、基礎体温計など女性のニーズに適う商品の開発で実績のあるオムロンヘルスケアと協業して、女性の健康に貢献する商品開発を開始することも併せて発表しています。

2. 丸紅

大手総合商社の丸紅では、2020年よりフェムテックを推進するプロジェクトチームが始動。その取り組みの一環として、2021年春から「オンライン外来ピルプログラム」「更年期チャットサービス」が、社内の福利厚生として試験導入されました。

プロジェクトチームは当初女性だけで発足しましたが、全社的に関心が高まった結果、現在は男性を含む約20名で構成。世代は20代から50代まで幅広く、所属も海外駐在員も含め多岐にわたっています。

3. 花王

日用品大手の花王も、化粧品ブランド「TWANY(トワニー)」でフェムテック領域へ参入しました。

第1弾として2021年3月より、株式会社エムティーアイが運営する女性の健康情報サービス「ルナルナ」アプリ内に、美容アドバイスを提供するコンテンツ「トワルナキレイ相談室」を設置。今後もトークセッションや各種イベントなど、継続的に女性に寄り添う活動を展開し、地域に根ざした啓発活動を行っていく予定です。

まとめ

働く女性が健康課題とうまく向き合い能力を発揮するためには、女性のみならず、男性も正しい知識を持ち、理解を深めていく姿勢が求められます。

そして企業側も、多様な働き方に対応できる柔軟な職場環境づくりを整えていく必要があり、そのためにはフェムテックをいかに取り入れ、使いこなせるかがポイントになります。

フェムテックの進展・拡大によって、働く女性の健康課題のケアは当たり前という風潮が醸成されれば、女性の力を最大限活かせる機会が増え、今後の企業経営にとって大いにプラスとなることは間違いないでしょう。

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