社内報コラム

パーパスブランディングとは?企業価値を高めるには

パーパスブランディングとは?企業価値を高めるには

コロナ禍がもたらした社会変動や価値観の変化をきっかけに、自社ブランドの存在意義(パーパス)を改めて再構築し、世の中に発信していく「パーパスブランディング」が注目されています。

そこで今回は、ビジネスにおけるパーパスの定義、パーパスブランディングと従来のブランディングとの違い、パーパスが重視されるようになった背景などについて、主な企業の事例も取り上げながらご説明します。

パーパスとは何か?ビジョン、ミッションとの関係性は?

パーパス(Purpose)は一般的に「目的」「意図」と訳されますが、ビジネスシーンでは「何のためにこの会社があるのか」という、組織や企業の「存在意義」を意味します。
その核心は「WHY」、すなわち「なぜそれをやっているのか」というシンプルな本質であり、事業の原点・根拠になる部分だと言えるでしょう。

類似した概念としてビジョンとミッションがありますが、ビジョンとミッションが「目指すべきところ」へ向けての「未来志向」の言葉であるのに対し、パーパスは「現在進行形」の感覚で、「今この瞬間、自分たちは何のために存在しているのか、何ができるのか」を語るものです。

この3つの違いを整理すると下記のようになります。

パーパス WHY 自分たちが何のために存在するのかという「存在意義」。ビジョンやミッションの根幹となる概念
ビジョン WHERE 自分たちが目指すところ、実現したい「あるべき」姿
ミッション WHAT パーパスやビジョンの実現に向けて自分たちがやるべきこと


企業のビジョンやミッションを定義する根幹となるのがパーパス
であり、このパーパスを重視する事業スタイルが、世界のビジネスシーンで昨今の重要なトレンドになりつつあるのです。

パーパスブランディングとこれまでのブランディングとの違い

パーパスに立脚した企業のメッセージに共感した消費者は、商品やブランドに高い価値を感じてくれます。同じく従業員も、自社で働く意義とやりがいを強く感じられるようになります。このように、自らの存在理由を社内外に広く深く認知してもらい、共感の輪を広げていく手法がパーパスブランディングです。

では、これまでのブランディングの違いはどこにあるのでしょう?

これまでのブランディングは、消費者を狙い撃ちしてブランドの価値を提供する「スナイパー発想」で展開されてきました。フォーカスされるのは消費者「個人」にとっての価値やメリットであり、社会での存在理由という視点では価値が定義されていません。

一方のパーパスブランディングは、「社会での存在理由」を明確に定義して共感を集めることにより、長期的なブランドへの愛着につなげようとするものです。そのため、利益拡大を目的としたこれまでのブランディングと違って、利益と直結しない場合もありえます。
つまり「ME価値(私にとって)」を中心に戦略を立てるのではなく、「WE価値(私たちにとって)」までを定義し、実現していくのがパーパスブランディングだと言えるでしょう。

パーパスが重要視されるようになった背景

企業経営やブランディングにおいてパーパスが重視されるようになった背景としては、次のような要因があげられます。

1. ターゲット層の価値観の変化

米国で3,000人のビジネスパーソンを対象に実施した調査(LinkedIn 2016)によると、「社会に対してポジティブなパーパスを掲げる企業で働くならば、給与が下がってもいい」と答えた人が約半数(49%)を占めるという驚くべき結果が出ました。

特に「ミレニアル世代」とも呼ばれる若い人たちの間で、就職先を考える際に売上や利益、規模よりも、「企業文化」「社会への貢献度」をあげる人が増えています。単に商品を作り、サービスを提供すること以上のパーパス、すなわち「働く意味」「自らの存在意義」を求めているのです。

【参考】日本の人事部:https://jinjibu.jp/keyword/detl/882/

 

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2. 投資家の評価基準の変化

これまで投資家にとっては、「収益が得られるかどうか」が企業を評価する上でもっとも重要な基準でしたが、社会全体がサステナブルやESGへの志向を強めるなか、「社会的課題の解決に貢献できるかどうか」が新たな評価基準に加わりつつあります。


たとえば世界最大の資産運用会社BlackRock(米)のCEOラリー・フィンクは、2019年に取引先CEO宛へ発信したレターのなかで、以下のように述べています。

「パーパス(企業理念)企業理念は単に利益を追求することではなく、それを達成するための活力であるということができるでしょう。利益の追求と企業理念は矛盾するものではなく、むしろ分かつことができない程に密接に関連しています。」

これからの時代、企業が確たるパーパスを持つことが投資の評価ポイントになることを、投資する側の観点からも明らかにしたわけです。

ESGについてはこちらへ

【参考】BlackRock LARRY FINK’S 2019 LETTER TO CEOS https://www.blackrock.com/americas-offshore/en/2019-larry-fink-ceo-letter
(日本語:https://www.blackrock.com/jp/individual/ja/about-us/ceo-letter-2019

3. モノからコトへの消費志向の変化

モノが家庭に行き渡り、かつ人口の減少によって消費市場全体が縮小するなか、消費の志向は「モノの所有」から「コトの体験・経験」へと確実に移り始めています。


モノであれば「WHAT」と「HOW」、つまり「何」を「どう」売るかを考えるのが先決でした。しかしコトは「WHY」、すなわち消費者から見て「なぜ、何のために」それを行う(選ぶ)のかが腹に落ちないと、市場にあふれる多くのコトのなかに埋もれてしまいます。

つまり「WHY」=パーパスを明確にすることで、自らの価値を他と差異化することができるのです。

パーパスブランディングの具体的な事例紹介

今日、多くのグローバル企業がパーパスを明確に打ち出し始めています。
例えばユニリーバは、全社のパーパスとして「サステナビリティを暮らしの“あたりまえ”に」を設定するだけでなく、商品ブランドごとにパーパスを定め、その実現に向けてのコミュニケーションとアクションについて、明確にイメージとプランを持つよう指針を掲げています。

ネスレもまた、パーパスブランディングを語る上で取り上げられることの多い企業です。「食の持つ力で、現在そしてこれからの世代のすべての人々の生活の質を高めていきます」を自社の存在意義として掲げ、その実現に向けて、「個人と家族」「コミュニティ」「地球」の3つの領域で活動を展開しています。

日本企業ではSONYがあげられます。世界中の従業員が同じベクトルで業務に取り組めるよう、2019年から「クリエイティビティとテクノロジーの力で、世界を感動で満たす」をパーパスとして掲げています。

その他にも多くの企業が、パーパスを軸にした企業経営やブランディングに力を注いでいます。

 

Google 世界中の情報を整理し、世界中の人々がアクセスして使えるようにすること
HYATT HOTELS お客様が最善を尽くせるようにお世話をする
TOYOTA 未来のモビリティ社会をリードする
Amazon 地球上で最もお客様を大切にする企業であること
NIKE スポーツを通じて世界を結束させること
P&G 現在、そして次世代の世界の消費者の生活を向上させる、
優れた品質と価値を備えた製品とサービスを提供します
富士通 イノベーションによって社会に信頼をもたらし、世界をより持続可能にしていく

パーパスの定義でインナーブランディングを

パーパスは新たに創り出されるものというよりは、企業や組織、あるいはマネジメント層や個々の社員の内面に潜在し、発掘されるべきものです。
自社の社会的な存在意義を改めて定義し直すプロセスを通して、組織と個人のパーパスを融合させることが可能になれば、働く人たちのモチベーションとロイヤルティは着実に高まり、企業にとっては非常に大きな力を得ることにつながるでしょう。

また、明確なパーパスに向かって組織が一丸となって動けるようになれば、そこで働く個人の動きもより迅速かつ自律的になり、新しい発想も生まれやすくなります。
パーパスブランディングの導入は、インナー向けにも極めて有用なのです。

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