社内報コラム

アサーティブネスはなぜ職場の人間関係を円滑にするのか?

アサーティブネスはなぜ職場の人間関係を円滑にするのか?

「上司に思うように意見が言えない」「ミスをした後輩につい言い過ぎてしまった」「頼まれ事を上手に断れない」。こうしたストレスを抱えがちな人に有効なのが、アサーティブネスと呼ばれるコミュニケーション手法です。

今回は職場での人間関係を円滑にするアサーティブネスについて、導入へのカギや具体的な実践例を交えてご紹介します。

アサーティブネスの意味とその由来

アサーティブネス(assertiveness)は心理学の認知行動療法で用いられる言葉で、「自分と相手を同等に尊重しながらも、自分の意見や気持ちを適切に表現すること」を表します。

端的に言うと「相手にも配慮した自己主張」であり、アサーションやアサーティブコミュニケーションと呼ばれることもあります。

もともとは米国の心理学者アンドリュー・ソルターが1949年に発表した「条件反射療法(Conditioned Reflex Therapy)」に由来し、本書でソルターは「人間が本来持っている『活動性』はしつけや社会的規範によって抑制されており、この本来の『活動性』を取り戻すのに必要なのがアサーティブネスである」と述べています。

アサーティブネスでないコミュニケーションとは?

アサーティブネスを理解するには、その逆の「アサーティブネスでないコミュニケーション」を知ることが近道であり、下記の3つのタイプに分類されます。

攻撃的タイプ

相手の気持ちに配慮せず、自分の意見を押し付けがちなタイプです。
一方通行の自己表現となるため相手に好印象を与えることが少なく、疎ましがられたり、信頼関係が構築しづらかったりする傾向があります。

常に自分が正しいという考えがベースにあるため、相手を見下したり軽視したりして威圧的に振舞うことも多々あります。

受身的タイプ

相手から悪く思われることを恐れる余り、自分の意見を主張できないタイプです。

真面目で責任感が強く、「頼まれた仕事が断れない」「他の人に手伝ってほしいと言えない」のが特徴です。

相手に合わせ過ぎるのは親切心によるものではなく、「自分が嫌われないように、傷つかないように」という自己中心性によるものです。
また、このタイプの多くは「自分がした気遣いを相手も返してくれて当然」と考える傾向があります。

作為的タイプ

意見や不満を直接口に出さず、態度や雰囲気で感情を伝えようとするタイプです。

表立っての争いを避ける代わりに、皮肉や嫌味を言ったり、不機嫌になったりして周りをコントロールしようとします。
相手に察してもらいたがる傾向が強く、外面はへりくだっていても中身は攻撃的です。
アサーティブネスは上記の3つのタイプとは違い、自分を中心にしないのはもちろん、
相手を中心にすることもありません。
常に自分と相手は対等だというスタンスで、対話に臨む気持ちがベースになります。

アサーティブネスはなぜ重視され始めたのか?

アサーティブネスが近年、ビジネスシーンでも重視され始めた要因としては次の3つが挙げられます。

社内コミュニケーション活性化への期待

相手を尊重しながらもしっかり自分の考えを伝え合える職場は、風通しの良さとコミュニケーションの活性化につながり、人間関係が円滑になって自ずとチームワークが強化されます。
そして強いチームワークが生まれると、生産性や従業員の満足度、定着率が上がるため、企業のサステナブルな成長に結びつきやすくなります。

従業員のメンタルヘルスケアとして

心理学の行動療法として当初取り入れられたことからも分かるように、アサーティブネスはメンタルヘルスケアに有効です。
特に受身的タイプの生真面目な人はメンタルヘルスが不調になりがちなので、アサーティブネスを導入することで、ストレスを原因とする離職の防止につながります。

職場におけるハラスメント対策として

例えば、攻撃的な口調でメンバーを叱責しがちな管理者がいる職場では、ハラスメントの問題が起こりやすくなります。
組織的にアサーティブネスに取り組むことにより、どのようなコミュニケーションが攻撃的で、どう変えれば良いのかを具体的に認知・理解させることができるので、ハラスメント対策の一つとして有効です。

アサーティブネス実践のための「4つの柱」

言葉がどんなにていねいでも、心の中で相手を見下したり馬鹿にしたりすると、その気持ちは自ずと相手に伝わります。
一方で多少表現がぎこちなくでも、誠実な言葉は相手の心を動かします。
アサーティブネスはスキルとしての側面もありますが、カギになるのは真摯に相手と向き合おうとする心の持ち方であり、「誠実」「率直」「対等」「自己責任」の4つがアサーティブネスを実践する上での柱となります。

• 誠実:自分自身にも、相手に対しても誠実であること
• 率直:気持ちや要求を伝えるときは遠回しではなく、ストレートに相手に伝わる言葉にすること
• 対等:上から目線や卑屈な態度はやめて、自分も相手も尊重した対等な態度を取ること
• 自己責任:言った責任も言わなかった責任も、自分が引き受けること

上記「4つの柱」を強く意識した対話を心がけることにより、コミュニケーションは自ずとアサーティブネスなものに変わっていくでしょう。

アサーティブネス実践の具体例

どのようなコミュニケーションの取り方がアサーティブネスなのか、職場での具体例を基に考えてみましょう。

予定があるのに上司から急に仕事を頼まれた場合

① 「今日は予定があるのでできません」
② 「分かりました…」(と予定をキャンセル)
③ 「今日は予定があるのでできませんが、明日の午前中なら仕上げられます。それで大丈夫でしょうか?」

①は攻撃的、②は受身的、③がアサーティブネスなコミュニケーションだと言えます。

「YES」「NO」だけで答えようとせず、答えは無数にあることを念頭に置くことがポイントです。

部下から「仕事が間に合わない」と報告を受けた場合

① 「いったいどうするつもりだ!」
② 「俺がやるからもういいよ」
③ 「仕事量が少し多過ぎたかな。作業を分担し直すから君は○○の部分を頼むよ。次からは間に合わないと思ったらもっと早く報告するようにね」

①は攻撃的、②は受身的、③がアサーティブネスなコミュニケーションだと言えます。

感情をぶつけたり諦めたりするだけでは問題は解決しません。互いに共感の土台を作った上で相手に提案するよう努めましょう。

次の予定がある中で長引く会議を終わらせたい場合

① 「次の予定があるので私はお先に失礼します」
② 「そろそろ時間が…」
③ 無言で何度も時計を見ては舌打ちする
④ 「時間なので終わらせていただきますが、残りの議題は追って会議日時を再設定しご連絡します」

①は攻撃的、②は受身的、③が作為的、④がアサーティブネスなコミュニケーションだと言えます。

自分の予定を犠牲にすることなく、他の参加者にも配慮しながら具体的な提案を出すよう工夫してみましょう。

まとめ

アサーティブネスは自分の主張を一方的に押し通したり、逆に自分の意見を飲み込んで我慢したりすることなく、相手を尊重しつつ自分の気持ちを伝える手法です。アサーティブネスが身につくと、自分も相手もストレスを溜めることなく、快適にコミュニケーションを取ることができます。

ここでご紹介した「4つの柱」を軸に、職場でアサーティブネスの浸透を図ってみてはいかがでしょうか。

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