社内報コラム

社内報のKPIづくりへの考え方と方法 第二部

社内報のKPIづくりへの考え方と方法 第二部

「社内報のKPIづくりへの考え方と方法」の第一部では、社内報制作のKPIに閲覧者数はPV数を用いてはいけないということと、そもそもKPIとは何なのかといったことをお伝えしてまいりました。

第二部では、第一部でお伝えした内容をもとに、社内報制作のKPIの作り方についてお伝えしてまいります。

KPIを設定するためにはKGIとCSFから

第一部でお伝えしました通り、社内報制作のKPIを設定するためには、予めKGIを設定し、CSFを導き出しておく必要があります。

そこで、まずは社内報制作のKGIの設定の考え方をお伝えします。

KGIとして設定しやすい指標は、閲覧者数やPV数が思い浮かびます。

ただ、社内報制作の成功は、読者が増えることではなく、第一部でお伝えしました通り、発行目的に資する情報が全社に伝わっていることや、社内報が発行目的に向けた社内のコミュニケーションに十分に機能していることですので、閲覧者数やPV数だけでは不十分といえます。

KGIは事業成功と直結した期間目標値でなければならないため、この数値を達成していけば、事業が成功するといった指標が求められます。

さらに、KGIは一律ではなく、考え方によってさまざまな方向で指標を設定することができます。

社内報の場合も同じで、考え方によってどういった指標を用いるかはさまざまですが、重要な点は、発行目的の実現に社内報制作として、望ましい効果を出しているかといったことを示す指標が求められます。

そこで、これは一つの考え方になりますが、閲覧者数やPV数と、発行目的に直結するコンテンツ数を関連づけることで、KGIを導き出すといった方法をお伝えします。

KGIは発行目的の実現に直結するように設定する

これはどういった考え方なのかについてお伝えします。

まず、閲覧者数やPV数は、社内報がどのくらいの人に見られたのかを示す指標だという点を押さえます。

この点を押さえておく理由は、発行目的に向けた社内報の効果は、社内報が見られなければ成り立たないからです。

ですので、閲覧者数やPV数はKGIに欠かせない指標だと考えることができます。

ただし、社内報がたくさんの人に見ていただけたとしても、その内容が発行目的と全く関係しないものだったとすると、社内報が発行目的の実現に向けて効果を生み出しているとは言えません。

ただ、社内報の発行目的と直結するコンテンツが見られた数だけを追い求めると、人に読んでもらえないようなツールになってしまう可能性が考えられます。

こういった、社内報の二つの側面を鑑みると、社内報制作のKGIには閲覧者数やPV数だけではなく、社内報が見られた数である閲覧者数やPV数とともに、発行目的と直結するコンテンツが見られた数の両方が必要となるといったことが考えられます。

KGIは1つの指標だけにすることが重要

ただし、KGIは通常、売上高といったように、1つの指標で目標を設定する必要があります。

その理由は、二つの指標でKGIを設定しまうと、どちらを優先すべきかといった迷いや混乱が生まれる可能性があるからです。

こうなってしまうと、正しい意思決定ができなくなってしまいます。

この考え方に基づき、社内報制作においては、先ほどの二つの指標をKGIを達成する要因、つまりCSFとして設定します。

CSFの数式化を考える

KGIを設定する際には数値を用いますので、CSFを数式で表すことをおすすめします。

社内報制作のKGIの策定にあたってはまず、閲覧者数やPV数の総数を、社内報を閲覧することが可能な人の数で割って導き出す、総閲覧率を一つの要因として設定します。

そして次に、発行目的に直結する記事を取り出して、その閲覧者数、つまり発行目的直結型コンテンツを見られた人の数を、社内報を閲覧することが可能な人の数で割った率を、もう一つの要因として設定します。

この、発行目的に直結するコンテンツをもう少し簡略化して、基幹テーマと表現し、この要因を基幹テーマ閲覧率とします。

そして「KGIは1つの指標で設定する」という考え方に基づいて、総閲覧率と基幹テーマ閲覧率の二つの要因を掛け算し、0.01を掛ける(または100で割る)ことによって、発行目的の実現に向けた進捗率(%)を導き出すといった数式を開発します。

コントロール可能な指標をもとにCVRを設定する

ただし、発行目的の実現に向けた進捗率を、総閲覧率と基幹テーマ閲覧率の二つの要因だけでKGIを設定してしまうと、基幹テーマのコンテンツが少ないほど数値が高まるといった結果になってしまいます。

そこで、この二つの掛け算を0.01で掛けた(100で割った)数値を、そのままKGIとして用いるのではなく、成果に至った率として示されるCVR(コンバージョンレート)として設定し、そして、このCVRに基幹テーマのコンテンツの数を掛けます。

こうすることで、まずはどれだけの人に情報が届いたのか(総閲覧率)と、どれだけの人に発行目的に資する情報が届いたのか(基幹テーマ閲覧率)を測れるようにします。

そして、閲覧した人たちが増えることによって、発行目的に資する情報に触れる人がどの程度増えるのかも(総閲覧率×基幹テーマ閲覧率×0.01)、数値的に割り出すことができるようになります。

こうして、発行目的の実現への現在の効果を知り、さらに、どういった指数にアプローチすることで、発行目的の実現に向けて有効なのかを導き出すことができるようになります。

基幹テーマのコンテンツ数による影響を考慮する

ただし、発行目的に資する閲覧者数である基幹テーマ閲覧率は、基幹テーマ数が少ないと高くなるといった可能性や傾向が出ることが考えられます。

さらに、発行目的と直接関連しないテーマばかりでは、たくさんの人に読まれる社内報にすることができたとしても、発行目的の実現に向けた効果は得られません。

そこで、KGIの設定にあたっては、総閲覧率と基幹テーマ閲覧率に0.01を掛けた数字に、さらに基幹テーマのコンテンツ数を掛けて、発行目的の実現に向けた効果を、より正確に測れるようにしておきます。

これを数式的に記すと

総閲覧率×基幹テーマ閲覧率×0.01×基幹テーマのコンテンツ数

となります。

基幹テーマのコンテンツ数をKGIに加える理由

基幹テーマのコンテンツ数を加えた理由には、先ほどお伝えしたような、発行目的の実現には、一定量の基幹テーマのコンテンツが必要だという点に加えて、発行目的の実現に向けた効果を適切に測るといったことが関係していますが、それらだけが理由ではなく、もう一つの重要な観点が含まれています。

それは、コンテンツの数が増えると、総閲覧者数や総閲覧率は高まる可能性がある一方で、たくさんの記事を読むといった「負担」が増えることで、1記事あたりの閲覧者数や閲覧率が下がる可能性があり、結果的に基幹テーマ閲覧率も下がる可能性があると考えられることが関係しています。

さらに、これは経験則ではありますが、基幹テーマが大半を占める、難しい内容が多い社内報は、総閲覧者数や総閲覧率が下がる可能性が予測されます。

先ほどお伝えした、

総閲覧率×基幹テーマ閲覧率×0.01×基幹テーマのコンテンツ数

という数式は、これらの観点を踏まえた上で、発行目的の実現に向けた社内報制作の進捗を見ることができ、それを正しく判断して適切な対策をとることができるようにすることをねらいとした数式となっています。

そして、この数式を仮に「発行目的の実現への効果指数」と名づけます。

社内報制作のKGIは、この「発行目的の実現への効果指数」を指標として用い、現在の数値を割り出し、期間中に目指すゴールを設定し、KGIの目標値を設定していきます。

社内報制作のKGIは成長率で設定する

KGIの目標値の決め方についてですが、「基幹テーマのコンテンツ」を加えることで、その値は無限となります。

これは売上高の目標値をKPIに設定することと同様です。

こういった点を踏まえて「発行目的の実現への効果指数」は、売上高を目標値とする場合と同じように、成長率で設定することをおすすめします。

そして、基幹テーマのコンテンツ数についても論理的には無限ですので、KGIの設定にあたっては、現在の取り扱いテーマを見て、望ましい量となっているのかどうかを判断し、どの程度増減させるかを、総閲覧率や基幹テーマ閲覧率など、他の指標の現状を見ながら、部署で検討し決定します。

総閲覧率に関するCSF

KGIが定まると、次はその目標値を達成するためのCSFの確認を行います。

CSFはKGIの達成に向けた重要成功要因ですので、その抽出にはKGIの算出に用いた数式の、総閲覧率と基幹テーマ閲覧率が糸口となります。

また、現場でコントロールできる要因という点がCSFの前提ですので、社内報制作のCSFについても、総閲覧率や基幹テーマ閲覧率をそのままCSFとして用いるのではなく、これをコントロール可能な要因に分解する必要があります。

まずは総閲覧率。

これは読者の期待に応えるコンテンツや施策を実施すると、その数値は伸びるという仮説に基づくと、読者の期待に応えるといった「集客型コンテンツ」の数をCSFにすることができます。

また、Eメールなどで、記事を公開した際などに発信するプロモーションも、総閲覧率を高める施策ですので、これも同様に総閲覧率を高めるCSFとして設定します。

基幹テーマ閲覧率に関するCSF

続いて、基幹テーマ閲覧率に対しては、基幹テーマのコンテンツを見られる記事にするための工夫といった、編集やデザインの改善件数をCSFとします。

これは、基幹テーマの閲覧率が、読者の興味や関心に対して効果的な手が打てているのか否かといったことが大きく関係しているためです。

その内容としては、例えば見出しを読まれるように工夫したり、サムネイル写真を読者の興味を惹くような見せ方に改善したり、記事を読み進めやすくする編集や記事の展開にするといった、読者の興味を惹いたり、読みやすくするための対策が該当します。

これらは、これまでの社内報制作の中で、読まれるために工夫してきた取り組みと同じだとお気づきだと思いますが、実はこういった工夫のCSFとしての役割に置き換えると、基幹テーマの閲覧率を高めるための取り組みだったと認識することができます。

社内報制作のKPIの種類は少なめにする

KGIとCSFが設定できましたので、いよいよKPIの設定に入ります。

CSFはKPIを設定するために必要な要因だとお伝えしましたが、KPIはあまり多く設定してしまうと、数値管理が目的化してしまう可能性がありますので、KPIの設定にあたっては、すべてのCSFを対象にすることは、KPIを設定する効果を下げてしまう可能性があります。

では、実際はどの程度の種類でKPIを設定することが望ましいのか。

KPIの設定やマネジメントについて詳しく解説している有名な書籍では、KPIは1つに絞るべきだとも言っています。

そしてその書籍では、KPIとして用いる指標は、KGIを達成するCSFの中の、最も弱いCSFを対象にすることが望ましいと言っています。

この考え方を踏まえて結論から言いますと、社内報制作のKPIを設定にあたっては、

総閲覧率→基幹テーマコンテンツ数→基幹テーマ閲覧率の順で現在の最も弱いポイントを選定し、注力するCSFを定めてKPIを決めることが効果的です。

社内報制作の効果を高めていく4つのCSF

ここで改めて、KGIに対するCSFを整理すると、

総閲覧率向上のための「集客コンテンツ」の開発と記事の公開

総閲覧率向上のための「プロモーション」の実施

基幹テーマ閲覧率向上のための「編集の改善」の実施

基幹テーマのコンテンツの開発と記事の公開

の4つとなります。

これらを指標として表現すると

総閲覧率向上のためのコンテンツは、たくさんの人に見てもらうためのコンテンツを指しますので、これを先ほどお伝えしたように「集客コンテンツ数」とします。

総閲覧率向上のためのプロモーションも、たくさんの人にもいてもらうための施策ですので、これを「集客施策数」とします。

そして、基幹テーマ閲覧率向上のための編集の改善は「実施改善件数」とします。

基幹テーマのコンテンツについては、「基幹テーマコンテンツ数」とします。

これらの指数もとにどれをKPIにするかを決めます。

まずは過去のデータで仮説を立ててKPIを設定する

ただし、最初はどの指標をどれだけ達成すればKGIを達成することができるのかについて、明確な指針がありません。

そこで、これまでの経験や記録しているデータをもとに仮説を立てて実践します。

例えば「集客コンテンツ数」については、過去1年間で公開した記事数の中で、閲覧者数が多かった記事、つまり集客性の高い記事をもとに、集客コンテンツ1件の平均的な集客効果を計測します。

これをもとに、集客性の高かった記事と類似するコンテンツを新たに複数公開し、総閲覧者率の伸び率を計測して、集客コンテンツ1記事あたりの集客効果の仮説を検証します。

その検証結果をもとに、KGIを達成するためには、総閲覧率どれだけ高めれば良いのかといった目標値を設定すると同時に、その目標値を達成するために必要な集客コンテンツ数をKPIとして設定します。

そのほかのCSFについても、集客コンテンツ数と同様に、過去1年間の実施内容とその件数をもとに現状を把握するとともに、KGIの達成に向けた効果を得るための仮説を設定し、関係するKGIを達成に必要な数値を見出して目標値として、そのために必要なCSFの実施件数をKPIとして設定します。

このように、KPIの設定にあたって、最初は過去のデータをもとに仮説を立てて実施し、KGIを達成するためのCSFの実施件数をKPIにして運用するとともに、その仮説の有効性を検証することで、KGIの達成に向けたKPIのマネジメントレベルの向上を図っていきます。

KPIはKGIの先行指標として設定し、活用する

社内報制作のKPIの設定方法や考え方は以上ですので、最後に要点をおさらいしておきます。

KPIはCSFというKGIを達成する要因を計測可能な指標にして、そのCSFをどの程度実行すればKGIを達成するのかといった考え方で、過去のデータをもとに仮説を立てて運用するということをお伝えしました。

そして、KPIを設定するために必要なCSFは、現場でコントロールすることができるものを選び出すことが重要だということをお伝えしました。

最後に、KPIはKGIの先行指標だといったことが言われますが、この点について説明しておきます。

これは、KPIはKGIを達成するための目標値であると同時に、現在の達成率をタイムリーに測る指標です。

つまりKPIの進捗の先にKGIの達成があるわけで、KGIが達成可能か否かをKGIに先行して見定めることができる指標と言えるのです。

KPIに関する最も大きな誤りは、目標達成に向けた進捗を測るといった、本来の活用がなされないことや、そもそもではありますが、目標達成の進捗を測ることができないことをKPIとして設定してしまうことです。

こういった誤りに気づくことなく、間違った考え方や方法で設定したKPIでは、下手をするとKPIが不要な業務を生み出す要因になるなど、マイナスの効果が出る可能性があります。

こういった点からも、社内報制作に限らず、KPIを用いてマネジメントを行う場合はまず、KPIの本来の役割やKPIを設定するために欠かせない考え方を、しっかり理解した上で行うことが基本中の基本となる点を押さえることが、何よりも大切だと思います。

まとめ

今回の記事では、社内報制作のKPIを設定するための考え方や方法とともに、KPIを設定するために必要な考え方やポイントについてお伝えしてまいりました。

KPIはマネジメントを進化させるツールだと言われますが、ツールを正しく、上手に使うためにはまず、そのツールの取扱説明書に目を通して、重要なポイントを理解したり、あるいは自動車のように、教習所に通ってトレーニングする必要があります。

また、今回お伝えしたKGIやKPIの設定方法や考え方は、社内報制作の効果を高めるための一例に過ぎません。

ぜひこれを機に、KPIやKGIの取扱説明書である関連書籍や情報を手に入れて、自社にとってより有益で有効なKGIの指標やKPIに必要なCSFの設定を行っていただけるようになれば嬉しく思います。

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