社内報コラム

社内報の創刊号を作るための10のポイント

社内報の創刊号を作るための10のポイント

様々な企業から社内報が発行されていますが、担当者として社内報創刊に関わったという方の数はそう多くはありません。

同様に社内報制作のサポートを行う制作会社も、創刊号から携わったり、そういったノウハウを蓄積しているということは、決して多くはありません。

そのようななか最近では、社内報は発行し続けてきたけれども、大規模なM&Aや経営規模の拡大に伴って、社内報をゼロから見直したり、あるいは社内報とは別に、新たにグループ報を立ち上げるといった、これまで運用してきた社内報とは全く異なるものとして立ち上げるケースが増えており、誰に相談すれば良いのかと、お困りの社内報担当者がたくさんいらっしゃいます。

社内報の創刊に向けた基本的な構想を考えるポイント

今回の記事では、創刊をテーマに、特集や連載コーナーの企画を立てる前に考える、社内報やグループ報の軸や枠組みといった、基本的な構想の立て方について、用語解説も含めてお伝えしてまいります。

1.準備期間

2.発行目的

3.編集コンセプト

4.運用方針

5.仕様計画

6.編集方針

7.編成プラン

8.年間計画

9.基本デザイン

10.コンテンツプラン

です。

 

1.準備期間

まずは創刊までの準備期間ですが、社内報やグループ報の創刊に向けて検討すべきポイントは、先ほどお伝えした2~10が該当します。

これらを考える期間は、会社の事情や経営者の意向などによって大きく変わりますが、標準としての目安は6ヵ月程です。

この期間を大きく分けると、前半の3ヵ月が2~10の、社内報やグループ報の「構想」を考える期間、後半3ヵ月が創刊号以降に掲載するテーマや内容を考えて、実際の記事を作成するための取材や原稿作成の依頼、編集、デザインに関する、いわゆる制作業務を行う期間となります。

2.発行目的

発行目的は文字通り、社内報やグループ報を発行する目的であり、社内報を発行するための「存在意義」のことです。

社内報の発行目的、つまり存在意義は一般的に、企業理念やビジョンの浸透、経営の意向や経営情報の共有、経営計画やその目標の認識、その実行の促進、部門間や職場間の連携の促進や連帯感の醸成、従業員間の相互理解の推進、社内コミュニケーションの活性化、意識改革や行動変容の促進、従業員エンゲージメントやモチベーションの向上、社内の風土や文化の醸成、企業と社会の信頼関係構築への啓発などといった、企業経営の円滑化や持続性に寄与することのほか、企業活動に関する記録や、危機管理・クライシスマネジメントへの寄与があげられます。

つまり、社内報の発行目的として示す内容は、従業員一人ひとりが従業員としての役割を果たすために必要な、共通のマインドやスタンスの醸成、意欲の向上や行動の促進と、それらを通じた企業の持続的な成長・発展に資するものが該当します。

3.編集コンセプト

編集コンセプトとは、社内報というツールをどのように作用させることによって、発行目的を実現させるのかを示す、社内報の在り方全般を司る考え方や価値の指針を示すものであり、発行目的の実現という課題に対して、いかにその課題を解決するのかという思想です。

逆の見方をすると編集コンセプトは、これ以降にお伝えする運用方針や編集方針、基本デザインなどを、発行目的と関連づけるための判断軸となります。

ここまで編集コンセプトを説明してきましたが、コンセプトという言葉は理解や解釈することが非常に難しいと思いますので、一つ例を示します。

を例えば、「みんなと共に頑張る気持ちを生み出す起爆剤」とすると、先ほどお伝えした発行目的の全てに関係しているとともに、「起爆剤」という言葉が示すような、アクティブでインパクトのあるツールになるイメージがわいてくると思います。

一方で「みんなと共に頑張る気持ちを生み出すエイドステーション」とすると、アクティブやインパクトよりも、どこか安らぎや救いを感じるようなイメージになると思います。

これによって、掲載するテーマやその伝え方についても、一定の方向が示され、これ以降にお伝えするさまざまなポイントが、編集コンセプトによってイメージ化されたことを指針にして、考えていけるようになります。

このように編集コンセプトは発行目的として示されるさまざまな意義を、ツールの運用や仕様、記事の編集、デザインに転換させる触媒のような役割を果たすものとも言えます。

4.運用方針

運用方針は、発行目的や編集コンセプトの実現に向けた方法や手法、使用するツールの種類、その活用策などに関する基準であり、発行目的や編集コンセプトを実現するための、ツールの活用や、編集に関する業務的な面の指針を示します。

例えば、発行目的の実現に向けた編集コンセプトである「社内の上下の関係やヨコの関係にある壁や垣根を取り除き、風通しの良い風土を形成・醸成する」をもとに、冊子版とWeb版をどのように活用していくかといった考えが運用方針に該当します。

その内容としては、冊子版とWeb版のすみ分け方の基準とともに、冊子版の場合は発行頻度、Web版の場合は更新頻度が該当します。

その他、従業員アンケートの実施に関しても、予め運用方針に加えたり、社内報に掲載するテーマや内容、基本的な見せ方の見直しをどの程度の頻度で、どの時期に行うのかといったことも、運用方針として定めておくと、社内報制作に関する業務等の安定化や平準化が測れます。

予算については予算計画や予算管理として取りまとめをされている方が多いかと思いますが、概算を運用方針として記しておくと、引き継ぎの際などに便利です。

5.仕様計画

仕様計画は、運用方針の実践に向けて使用するツールそれぞれの、形状やボリュームといった枠組みやルールが等が該当します。

冊子版の場合は誌面サイズ、ページ数、開き方、色数、紙の種類がそれにあたり、Web版の場合はPCやスマホといったツールや、閲覧するブラウザの指定、双方向性等の各種機能の指定、表示ルール、ログインの方法などです。

次項目でお伝えする基本デザインについても、その大枠や方向性、イメージを仕様計画として検討しておくと、この後に取り決めていくことのブレを抑えることができるため効率的です。

6.編集方針

社内報の編集方針とは、発行目的の実現に向けた、企画や記事の執筆、デザインといった、社内報を編集するための指針であり、編集や制作を担うメンバーが共有するべき共通の価値観のことを指します。編集メンバーはもちろん、制作等を委託している外部制作会社も含まれます。

編集方針の内容は主に、伝える内容や伝え方、見せ方に関する「考え方」の方向性や取り決めを、発行目的や編集コンセプト、運用方針、仕様計画に基づいて示します。

その示し方は会社によってさまざまですが、イメージとして社内報を企業に例えるとわかりやすく、発行目的が企業理念やパーパスだとすると、編集コンセプトが長期ビジョン、運用方針や仕様計画が経営計画にあたり、そして編集方針はバリューや行動指針にあたります。

7.編成プラン

編成プランはこれまでにお伝えしました編集コンセプトや運用方針、仕様計画、編集方針に基づき、社内報に掲載するテーマを考えて、冊子版の場合は台割やページネーション、Web版の場合はグローバルナビの割り振り方を決めることです。

8.年間計画

年間計画とは、これまでにお伝えしてきたことをもとに取りまとめる、1年間で実行する計画のことです。

その内容は、特集で掲載するテーマの設定や、連載コーナーに掲載する内容や対象を具体的にすることと、それをいつ載せるのかといった掲載時期を定めることです。

年間計画を立てる際には、テーマや掲載内容、掲載対象、掲載時期のほか、それらを実践するための準備の計画もあらかた組んでおきます。

9.基本デザイン

基本デザインは冊子版やWeb版の見せ方のイメージやルールを、デザインとして見える形で示した上で、レギュレーションとして言葉で示すことです。

その方法としては、デザインのトーン&マナー(トンマナ)や、イメージマップと言われる「このデザインのイメージはOKだけれども、このイメージはNG」といったことを示すガイドラインのようなものを作成します。

これを作成しておくことで、ツールとしての統一感が保たれるとともに、本制作に入った段階でのコミュニケーションの齟齬や出し戻しが少なくなり、記事の企画や内容の精度アップに時間や労力をあてる余裕が生まれます。

ただし、基本デザインをあまり細かく定める必要はなく、トーンや見栄えの方向性を関係者が認識できるレベルで十分です。

なお、実制作で用いるデザインは、基本デザインをもとに、次にお伝えするコンテンツプランに基づいて、各コーナーやコンテンツのフォーマットやテンプレートとして設計します。

10.コンテンツプラン

コンテンツプランとは、掲載するそれぞれのコンテンツのテーマをもとに、掲載のねらいや読後感と、それらをもとにした伝え方の切り口やデザイン、掲載する要素などを組んでいくことを指します。

通常、社内報の編集や制作で言う「企画」は、このコンテンツプランのことを示しています。

コンテンツプランの例や立て方については、社内報ラボでもたくさんご紹介しておりますので、ぜひそちらもご覧ください。

まとめ

今回の記事では、社内報の創刊にあたって取り決めることと、その流れについてお伝えしてまいりました。これらを考えたり、考えたことの是非を判断する上で最も重要なことは、考えたことに対して、読者である従業員の皆さまが価値を感じるのか、読むことに多大な負担にならないか、みんなにきっちり届くのか、みんなが読みたいという気持ちになるのかという点に加えて、作り手がワクワクすることができるかどうかです。

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