社内報コラム

セレンディピティとは?幸運な偶然をビジネスに生かすために

セレンディピティとは?幸運な偶然をビジネスに生かすために

「幸運な偶然を手に入れる力」を意味する言葉セレンディピティ(serendipity)が、近年注目を集めています。もともとは科学の世界でよく口にされてきた言葉ですが、なぜビジネスシーンでも用いられるようになったのか?その背景や理由などについて解説したいと思います。

セレンディピティと単なる偶然はどう違う?

仕事中に必死で考えても答えが出なかったのに、帰宅途中に読んだ本の一文が呼び水となってアイデアがひらめいた…。皆さんもそんな経験をお持ちではないでしょうか。

このような現象をセレンディピティと呼びます。セレンディップ(セイロンの旧称)の3人兄弟の王子が、思いがけない幸運のおかげで困難を次々と乗り越える冒険物語から作られた造語で、偶然から大発見につながるケースが多い科学の世界でよく使われてきました。

ニュートンが木から落ちるリンゴを見て万有引力の法則を発見した逸話や、フレミングがシャーレの中に偶然発生させた青カビを見てペニシリンを発見した逸話などは、セレンディピティのわかりやすい一例です。

ただし木からリンゴが落ちる光景や、シャーレに発生した青カビを目にする機会は誰にでもあります。その偶然が世紀の大発見につながったのは、ニュートンやフレミングが持つ洞察力や気づきの力、あるいは研究テーマに対する執念深さの賜物であり、そこがセレンディピティと単なる偶然との決定的な違いと言えるでしょう。

セレンディピティはなぜ重要性を増しているのか?

では、なぜ近年になってセレンディピティの重要性が語られ始めたのでしょうか。

理由の一つに挙げられるのが、オンラインを前提にした新たな生活スタイルの普及です。

コロナ禍を機に、リモートワークを採用する企業が増えてきました。リモートワークには感染症リスクの低下はもちろん、通勤ストレスの解消、設備費用の削減など多くの利点があり、今後はますます主流になっていくでしょう。

ただその反面、社員同士の気軽な雑談や何気ない経験を共有できる場は激減し、「幸運な偶然」が生まれにくい環境になってきました。予想外の発見やイノベーションにつながる時空間をどのようにオンライン上で形成すべきかが、課題として浮かび上がってきたのです。

そしてもう一つの理由としては、インターネットによる情報やニーズの分断が挙げられます。

ネット上には情報が溢れかえっているにも関わらず、検索やSNSを通して私たちが目にするのは、SEO対策された記事や自らの閲覧履歴に紐付いた情報が中心です。

つまり、関心の枠内にある情報ばかりが際限なく浴びせられる反面、未知のジャンルの情報や人との偶然の出会いにワクワクする機会が減っているわけです。

近頃若者の間で、リアルな人のつながりやコミュニティが見直され始めているのも、情報の分断・タコツボ化に疲れ気味の人が増えたせいかも知れません。

今後はユーザーのセレンディピティをいかに引き出し、予想外の新たな発見と出会いにつなげられるかが、事業者にとって重要になってくるでしょう。

セレンディピティがビジネスにもたらすメリットとは?

セレンディピティを能力やスキルの一つと考え、能動的にマネジメントしてビジネスに生かすことができれば、次のようなメリットを得ることができます。

気付きがもたらされる

自分自身が意図しない偶然のひらめきによって、物事の新たな一面を見出したり、問題や課題の解決法に気付くことができたりします。

イノベーションが生まれる

セレンディピティから得られた情報やアイデアには、今までの常識を覆すようなものが少なくありません。そうした発見から、企業や業界全体に影響を与えるイノベーションが生まれることがあります。

経営戦略に役立つ

経営戦略を考える際に人はさまざまな状況を予測しますが、人間の予測能力には限りがあります。そこにセレンディピティを巧く組み込めば、今まで思いつかなかった戦略を取ることができます。

セレンディピティを起こしやすくする方法

セレンディピティを能力やスキルとしてとらえれば、自ら意識的に強化することができるはずです。そのための方法として例えば次のようなことが挙げられます。

さまざまなことに興味を持ち行動量を増やす

多様な価値観や物事に触れることで、思いも寄らない面白い結果や発想を呼び起こしやすくなります。
いつもと違う店に入ってみる、新しい分野の本を読むなど、さまざまなことに興味を持って行動を起こしてみましょう。

自分の考えを積極的に表に出す

思いつきや着想を頭の中だけに留めず、積極的にSNSで発信したり周りに表明したりしましょう。それが引き金になって他者からヒントが得られたり、違う角度からのアプローチにつながったりすることもあるからです。

ゼロベース思考を持つ

ゼロベース思考とは、仕事を進める上で自ずと前提にしている諸条件(予算・時間配分・スキル・人脈・方法など)を、一旦ゼロにして考え直す思考法のこと。こうすることで想定を超えるアイデアの結合が起こり、セレンディピティを引き起こす確率が高まります。

ポジティブに物事を受け止める

例えばイレギュラーな状況に遭遇した時、「困ったな」とネガティブにとらえず、「この事態が起きた背景は何?」「どんなメッセージが隠されているのか?」と考えることにより、日頃と異なる発想が浮かんでくることがあります。
こうしたポジティブな姿勢が、チャンスを招き寄せることもあるはずです。

セレンディピティの有名事例

ポストイット

化学メーカーの3M社では、強力な接着剤を開発するプロセスで、「くっつきやすく剝がしやすい」性質を持つ接着剤を偶然生み出しました。
これを見た同社の研究員が商品に転用できないかと試行錯誤した結果、誕生したのがポストイットです。

Twitter

2006年に作られた当初のTwitterは、社員が遊びで作ったショートメッセージの交換ツールでした。
しかし社内での人気に気づいた幹部が、このツールに中毒性があることを発見し、改良を重ねた結果今のスタイルとなって大いに普及しました。

コカ・コーラ

コカ・コーラは元々、コカ・ワインというアルコール飲料の一つでした。
しかし1886年に禁酒法が制定され販売中止になった後のある日。開発者がたまたま原液を炭酸水で割ってしまったところ、思いがけずおいしい飲み物ができあがり、「コカ・コーラ」が完成したと言われています。

電子レンジ

アメリカの軍需製品メーカーで働いていたスペンサー博士という人物が、1945年にレーダーの実験をしていた際、ポケットの中にあったチョコレートが電波のせいで柔らかくなったのを発見。これがやがて電子レンジの原理となりました。

まとめ

発明王トーマス・エジソンは、「天才は、1%のひらめきと99%の努力である」という名言を残しました。

従来この言葉は、「天才になるには才能だけではなく、努力が不可欠だ」との教訓として流布されていました。しかしエジソンの真意は、「1%のひらめきがないと99%の努力は無駄に終わる」点にあると近年では解釈されています。

つまり「努力するのは当たり前。成功するにはたった1%でもひらめきが欠かせないのだ」ということです。
セレンディピティをただの「幸運な偶然」と考えず、ビジネスに欠かせないスキルとして意識的にマネジメントすることで、新たなビジネスチャンスが得られるかも知れません。

 

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