社内報コラム

エンプロイーエクスペリエンスとは? withコロナ時代の従業員との関係構築

エンプロイーエクスペリエンスとは? withコロナ時代の従業員との関係構築

近年、「エンプロイーエクスペリエンス(EX)」という概念が注目されているのをご存じでしょうか。エンプロイーエクスペリエンスとは、従業員の体験のことなのですが、一体どんな概念なのか、また、なぜ注目されているのでしょうか。

今回は、従業員満足度やエンゲージメント向上に寄与すると言われる「エンプロイーエクスペリエンス」についてご紹介します。

そもそもエンプロイーエクスペリエンスとは

エンプロイーエクスペリエンスは、直訳すると「従業員の体験」という意味ですが、体験に含まれるのは、入社、研修、日常業務、異動、退職はもちろん入社前・退職後まで、従業員が企業で働くなかで得られるすべてを指しています。たとえば、仕事をして得られる働きがいや働きやすい職場環境、自身のスキルアップ、昇進や昇給、身体や心の健康状態などです。

「ユーザーエクスペリエンス(ユーザー体験)」や「カスタマーエクスペリエンス(顧客体験)」という言葉をお聞きになったことはあるでしょうか。これは心地良さや快適さ、驚き、感動など、商品の直接的な価値以外の「体験価値」の提供によって、顧客のロイヤルティやエンゲージメントを長期的に向上させるというマーケティングの考え方です。

エンプロイーエクスペリエンスは、同じようにそれを従業員に対してあてはめた概念のことで、体験価値の提供で従業員のロイヤルティやエンゲージメントを高めるというものです。
日本を含む8か国の企業の経営者・役員約1,100名への調査では、「従業員エクスペリエンスは経営層にとって重要課題とみなされている(ある程度、非常に)」という回答が全体で81%、日本では77%となっています。また、人事部を「エンプロイーエクスペリエンス」という部署名に変更した企業も存在し、その注目度は増しています。

参照:「従業員エクスペリエンスの実態とテクノロジーの役割に関する8か国調査」The Economist Intelligence Unit/Citrix

https://www.citrix.com/ja-jp/news/announcements/jun-2019/the-experience-of-work-and-the-role-of-technology-research-jp.html

今、エンプロイーエクスペリエンスが重要視される背景

では、なぜ今エンプロイーエクスペリエンスが注目されているのでしょう。

ひとつには、デロイトトーマツコンサルティングの「グローバル・ヒューマン・キャピタル・トレンド 2017」で人事部門・人材活用の10のトレンドのひとつとして取り上げられたことがきっかけになりました。そして日本では、少子化に伴う労働人口の減少があげられます。人材不足に悩む企業は多く、いかに優秀な人材を確保するか、また少ない人材で生産性を向上させるかなどが課題となっています。

また、ミレニアル世代・Z世代と呼ばれるデジタルネイティブ・ソーシャルネイティブ世代の存在があります。これからの組織を担っていくこの世代は、転職への抵抗感が少なく、また、収入よりも自分の価値観を大切にする傾向をもっています。そのため、人材の定着を図ることも企業のひとつの課題となっています。

さらに、2020年のコロナ禍でテレワークが拡大、近年提唱されていた働き方改革が大きく進んだことで、企業と従業員との関係が改めて見直されるようになりました。こうした環境を背景に、エンプロイーエクスペリエンスを向上することで、人材を確保するとともに、ロイヤルティを高めて流出を防ぎ定着率を上げることなどが期待されているのです。

参照:「グローバル・ヒューマン・キャピタル・トレンド 2017」デロイトトーマツコンサルティング
https://www2.deloitte.com/jp/ja/pages/human-capital/articles/hcm/global-hc-trends-2017.html

 

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エンプロイーエクスペリエンスの効果やメリット

 エンプロイーエクスペリエンスの向上によって、以下のような効果があると考えられています。

参照:「従業員エクスペリエンスの実態とテクノロジーの役割に関する8か国調査」The Economist Intelligence Unit/Citrix

https://www.citrix.com/ja-jp/news/announcements/jun-2019/the-experience-of-work-and-the-role-of-technology-research-jp.html

エンゲージメント/ロイヤルティの向上

職場環境や待遇、スキルアップ、キャリア形成など企業とのコミュニケーションを通して、会社が従業員に対して質の高いエンプロイーエクスペリエンスを提供すれば、従業員は会社に対して高い満足感を得るようになり、帰属意識やエンゲージメントが向上します。

離職率の低減/採用強化

従業員満足度やエンゲージメントが高まれば、従業員が「自分は良い会社に勤めている」と感じ、その企業から離れようと考える人材は減っていくことでしょう。従業員が自社を良い会社だと思うようになると、リファラル採用にもつながります。

また、労働環境や職場環境の雰囲気の良さが外部に伝わることで、優秀な人材の獲得も期待できます。

生産性向上

働きやすい職場環境や風通しの良い組織では、従業員のモチベーションも向上します。いきいきと働ける環境であれば、意欲的で自発的に行動する従業員が増え、生産性が向上したりイノベーションが生まれたりすると言われています。生産性向上のためにも、従業員のキャリア開発や成長機会のサポートなどが今後ますます重要になっていくでしょう。

業績向上/顧客満足向上

従業員の生産性が向上すれば、業績にも良い影響をもたらします。さらには、顧客満足度向上にも寄与すると考えられています。PwCは、「世界の消費者意識調査2019」でエンプロイーエクスペリエンスの改善がカスタマーエクスペリエンスを改善に導くと提言しています。この調査で店舗でのショッピング体験を大幅に向上させると思わせる要因について質問したところ、「取り扱い商品について深い知識を持った店舗スタッフ」という回答が2位でした。知識豊富な従業員は顧客にとっても重要であり、従業員への教育ややりがいの提供が、ひいては顧客との関係性をも向上させる一端を示しています。

参照:「世界の消費者意識調査2019今必要なのは消費者中心の指標:「体験からのリターン」」PwC
https://www.pwc.com/jp/ja/knowledge/thoughtleadership/consumer-insights-survey/2019/customer-and-employee-experience.html

エンプロイーエクスペリエンスを高めるには

エンプロイーエクスペリエンスの考え方を取り入れ、また高めるための取り組みについてご紹介します。

エンプロイージャーニーマップの作成

聞きなれない言葉かもしれませんが、「エンプロイージャーニーマップ」は、従業員の企業における一連のフロー(企業との出会い、採用応募、入社から退社、退社後など)と、その各段階における従業員の感情や行動、提供できる価値を可視化・設計したものです。これもマーケティングにおけるカスタマージャーニーマップの考え方に基づいています。

各段階で従業員にどのような行動をとってほしいか、そのためには従業員はどのような感情や気持ちになっていると良いか、そのために提供できる施策(価値)は何か、これらを整理し、まとめていきます。エンプロイージャーニーマップで、目指す姿を含めた全体像をまずは設計しましょう。そして、運用しながら会社の変化や実際の状況に応じて定期的に見直しを図っていくと良いでしょう。

従業員アンケートの実施

従業員が現在どのような状態にあるのか、何を感じているのかを定期的に調査し、可視化します。従業員満足度調査やエンゲージメント調査を行い、社内の課題や不満などを見つけ出し、それらの解決に早期に取り組めることが重要です。もちろん、満足度やエンゲージメントが高い要因があれば、そうした取り組みをさらに重点的に行っていくことも可能になります。

健康経営の推進

「エンプロイーエクスペリエンス」という言葉自体は意識していなかったとしても、健康経営を重視し始めている企業は多いのではないでしょうか。長時間労働やハラスメントなど、社会課題として認識されており、これらへの対策は非常に重要です。従業員が心身ともに健康に働ける環境を整えることは、単なる従業員の健康を維持するということではなく、企業へのエンゲージメントを高める効果も期待できるでしょう。

 

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オフィス環境の整備

どのような場所で働くかも従業員にとっては重要な要素となります。居心地の良さや快適さ、家具や備品、レイアウトなど、働きやすい環境を整えることは、仕事をする上で無意識に蓄積するストレスを軽減することでしょう。コミュニケーションを促進し、クリエイティビティを刺激するオフィス環境は、こんな場所で働いてみたいという志望動機を形成し、採用活動にも良い影響をもたらす可能性があります。また、コロナ禍においては、リモートワークや在宅勤務の取り入れやすさ、ネット環境やセキュリティの整備なども、従業員のエンゲージメント向上に寄与する要素として重要度が高まっています。

 

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企業価値向上を実現するために

リモートワークや在宅勤務、副業の推奨など、私たちは多様な働き方を選べる時代になってきています。企業が優秀な人材を確保し、長く働いてもらうためには、従業員にどんな体験を提供できるのかが問われはじめているとも言え、優秀な人材に選ばれる企業になることが企業の成長につながります。たとえばさまざま取り組みを、社内報を通じて発信し、従業員とコミュニケーションをとることも重要です。労働力不足や働き方改革が叫ばれている今こそ、ぜひエンプロイーエクスペリエンスを向上させる施策を検討してみてください。

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